一人医療法人設立のメリット・デメリット
メリット
- ■社会的信用
- 病院会計準則に従った会計を採用することで、適正な財務管理が可能。金融機関等への対外的信用が向上し、融資が有利に働くことがある。
- ■経営体質の強化
- 社会保険診療報酬の源泉徴収がなくなるため、資金を有効に利用できる。
事業承継、相続対策等を計画的にすすめやすくなる。
分院や介護保険事業等への事業展開の拡大が可能になる。
デメリット
- ■繰越欠損金が使えない。
- 法人成りすることで、個人診療所時代に繰り越し欠損金がある場合はその繰越欠損金が失われる。
- ■業務範囲の制限
- 医療法人の付帯業務禁止規定により、業務範囲が制限されている。
- ■資金の入出金
- 医師個人は、原則として役員報酬を受け取るが、役員報酬以外の自由に処分できる資金がなくなる。
- ■社会保険適用
- 社会保険が強制適用となり、役員及び従業員は健康保険・厚生年金に加入しなくてはならない。(一定の手続きにより医師国保を継続することも可能)
- ■登記、決算書類の提出義務
- 法務局への財産額の変更や役員変更等の登記、都道府県知事に決算書類の提出が義務づけられる。
- ■立ち入り検査、解散
- 都道府県知事による立ち入り検査等の指導が強化される。
- ■交際費の上限
- 交際費として、損金に算入できる金額に限度が設けられる。
- ■小規模企業共済
- 個人で掛けていた小規模企業共済は、原則として脱退しなくてはならない。
□税務上のメリット
- ■所得の分散
- 院長先生のほかに院長夫人等の家族を役員にすることで、その職務に応じた役員報酬の支払いができ、効果的な所得の分散が図れる。
- ■役員退職金の受取
- 役員の退職時に役員退職金を受け取ることができる。
- ■保険料の損金算入
- 一定の契約条件を満たした生命保険契約や損害保険契約等の保険料を経費(損金)にすることができる。個人の場合は、生命保険は医療費控除で限度あり。
- ■留保金課税の非適用
- 配当禁止という制約を受けるため、同族会社の留保金課税の適用がない。
- ■所得税・住民税の節税
- 所得税の「超過累進税率」から法人税の「2段階比例税率」を適用することにより、所得税、住民税の税負担を軽減することが可能。
- ■相続税対策
- 一人医師医療法人で設立する場合は、できるだけ少額の基金で設立し、後継者に持分を贈与することが可能となり、法人の事業承継が容易となる。
ただし、経過措置型医療法人の場合には、持分があるため、事業承継時の相続税負担が大きい。
- ■消費税の免税
- 法人設立後2年間は消費税が免除されるため、個人クリニックの2年間に加え、法人設立後2年間を加えた4年間、消費税が免除される。ただし、売上や給与の額によって1年だけのケースあり。